市場構造シリーズ 第5回
外資参入と転身
国内証券従事者は次々と外資へ流れた。
だが、その全員がディーラーとして雇われたわけではない。
規制が強まり、組織の論理が色濃くなり始めた頃、
市場には新しいプレーヤーが本格的に入り込んできた。
外資系証券である。
彼らの動きは速かった。
意思決定が速く、報酬体系は明確だった。
日本とは違うこれまでにない世界観は、多くの人材を引き寄せた。
周りは次々と外資へ流れていった。
ディーラーもいた。
だが実際には、すべてがフロントで裁量を握れるわけではなかった。
多くは基本業務へ配置される。
リスク管理、オペレーション、バック、管理部門。
組織としての完成度は高いが、
裁量で勝負する現場とは少し距離がある。
外資に行けば自由になれる、
そう単純ではなかった。
組織はより合理的であり、より分業的でもあった。
私は外資へは行かなかった。
だが社員ディーラーという立場は捨てた。
選んだのはインセンティブディーラーだった。
そこには肩書も年次もない。
あるのは結果だけだ。
勝てば報酬は跳ねる。
負ければ何も残らない。いや、破滅することすらある。
単純で、残酷で、そして公平だった。
外資参入は市場を加速させた。
スピードは上がり、
ロジックは洗練され、
情報の質も変わった。
それまで“現場の感覚”で回っていた世界に、
数理と戦略が本格的に入り込む。
感覚だけでは通用しない。
構造を理解する者が優位に立つ。
インセンティブの世界は自由だった。
だが同時に孤独だった。
すべての判断が自分に返る。
すべてのミスが自分に残る。
外資参入は、単なる勢力拡大ではない。
市場の質を変える入口だった。
そしてその変化は、次の段階へ進む。
人間の判断を圧縮する技術。
アルゴリズムの台頭である。